素敵なインテリアの住まいは、なくても生きていけるものです。ただ、どう生きたいのかと考えたときに、とても大切になってくるものです。
それにもかかわらず、日本の住環境はいっこうにレベルアップしません。住まいが小さいからでしょうか、いいインテリアアイテムがないからでしょうか、収納が少ないからでしょうか。じつは、このどれでもありません。
インテリアが素敵かどうかは、部屋の広さとは関係ないのです。むしろ、同じお金をかけたとき、小さい部屋のほうが質を高められます。広くて質がそこそこの部屋と、小さくて質の高い部屋、どちらで過ごすことが幸せを感じられると思いますか? 私の経験上、後者です。
また、気に入った家具を買っただけで部屋が素敵になるでしょうか。残念ながら、家具を買うだけで素敵な空間が自動的に出現するわけではないのです。物の組み合わせ、つまりコーディネートによる相乗効果を使わなければ、素敵な家具も生きません。
そして誰もがほしいという収納。もちろん、収納スペースは必要ですが、自分が楽しむための空間を犠牲にしてまで、不要なものを溜め込むスペースが必要でしょうか。
素敵なインテリアの基本は、質を高めることです。床、壁、窓まわり、建具、もちろん家具も。質の高いものに囲まれることで居心地よく、満足感も得られます。部屋を素敵にする目的は、幸せな気持ちになり、その幸せが続くことです。「今はここまでしかできない」というのも大歓迎。「狭いから」「収納がないから」といいわけをしないでがんばれば、時間がかかっても必ず素敵な部屋は手に入ります。みなさんの幸福感のために、私の経験がお役に立てば幸いです。
TANOGUCHI JUNKO
学生時代にファッションデザインを学び、結婚後、1985年ごろから家具の販売と、お客様の部屋やマンションのモデルルームのコーディネートを手がける。自宅のリフォームをきっかけにインテリアデザインを始め、現在はコマチ家具のインテリアデザイナー。狭い部屋、梁や柱で凹凸の多い空間を、「狭くてよかった」「梁や柱があってよかった」と思わせるほどの逆転リフォームデザインが得意。